全国労働衛生週間、栃木の中小企業は何をすべき?
「全国労働衛生週間って、うちの会社は何をすればいいのだろう」と感じている経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
10月1日から7日は全国労働衛生週間です。義務なのか、何から始めればいいのか、産業医の立場から一緒に考えていきましょう。
📋 この記事の目次
- 全国労働衛生週間とは?安全週間との違いと2026年の期間・スローガン
- 参加は義務?中小企業の法的な位置づけ
- 「他の会社は何をしているんですか?」に答えます
- 準備期間の総点検、栃木の中小企業が優先すべき3項目
- 産業医を巻き込むと「形だけ」にならない
- 栃木で使える相談先とまとめ
- よくある質問
全国労働衛生週間とは?安全週間との違いと2026年の期間・スローガン
全国労働衛生週間は、毎年10月1日〜7日に実施され、9月がその準備期間にあたります。令和8年度で77回目を迎える全国的な取り組みです。

10月1日〜7日、準備期間は9月中
正直なところ、産業医である私自身も、臨床医時代は全国労働衛生週間を意識していませんでした。
顧問先の担当者様から質問を受け、あらためて調べたのがきっかけです。
令和8年度は準備期間が9月1日〜30日、本週間が10月1日〜7日と定められています。
今年のスローガンは「ひとりひとりが貴重な人材 心も体も健やかに みんな生き生き健康職場」です。
7月の「安全週間」と何が違うのか
7月の全国安全週間は、労働災害(けがや事故)の防止が中心のテーマです。
一方、10月の全国労働衛生週間は健康管理やメンタルヘルスなど「健康」に重点を置いています。
実際に顧問先を見ていますと、この2つの週間はどちらも区別されていない、というのが実感です。
まずは「安全」と「衛生」という目的の違いを、社内で共有することから始めてみてください。
2026年のスローガンと厚労省が挙げた背景
(有所見率・メンタル労災・腰痛)
厚生労働省は今回の重点事項として、メンタルヘルス対策や治療と仕事の両立支援を挙げています。
加えて、女性の健康課題や化学物質対策、転倒・腰痛災害の防止も強調されています。
7月の全国安全週間と10月の全国労働衛生週間は、職場の安全と健康について見直す良い機会です。
💡 ポイント:まずは今年のスローガンと期間を社内に掲示するだけでも、第一歩になります。
参加は義務?中小企業の法的な位置づけ
全国労働衛生週間への参加自体に法的義務はありません。
ただし関連する健診事後措置やストレスチェックなどの法定義務は、着実に守る必要があります。
週間そのものに参加義務はない
全国労働衛生週間は、あくまで自主的な取り組みを促すための啓発期間です。
参加しなかったこと自体を理由に、処罰されることはありません。
ただし「総点検」の中身は法定義務と重なる
(健診事後措置・ストレスチェック・面接指導)
たとえば、健康診断で異常の所見があった従業員については、医師の意見を聴き、必要に応じて就業上の措置をとることが労働安全衛生法第66条の4・第66条の5で義務づけられています(健診の事後措置)。
ストレスチェックは、常時50人以上の事業場で年1回の実施が義務です(同法第66条の10)。50人未満の事業場も義務化が決まっています。
月80時間を超える時間外・休日労働があり疲労の蓄積が認められる従業員から申出があれば、医師による面接指導が必要です(同法第66条の8)。
そもそも産業医の選任(同法第13条・常時50人以上の事業場)が済んでいない場合は、産業医選任ガイドで流れを確認しておきましょう。
⚠️ 注意:週間は任意でも、健診事後措置やストレスチェックには期限のある法定義務が伴います。
💡 ポイント:この機会に、法定義務を果たせているかどうかをまとめて確認しておきましょう。
「他の会社は何をしているんですか?」に答えます
実施要綱が示す活動は5つあり、中小企業はまず掲示と上長への説明から始めるのが現実的です。

実施要綱が挙げる5つの活動(巡視・掲示・表彰・訓練・講習会)
厚生労働省の実施要綱では、職場巡視、スローガンの掲示、労働衛生の表彰が挙げられています。
加えて、緊急時を想定した訓練や、講習会・見学会の開催も推奨されている活動です。
冬に向けた手洗い・うがいの徹底やアルコール消毒の設置なども簡単に行えます。
中小企業は「掲示」と「上長への説明」から始める
社内にスローガンを掲示するだけでも、従業員に「健康を大切にする会社」という姿勢が伝わります。
あわせて、経営者や上長に週間の趣旨を簡単に説明しておくこともおすすめです。
この2つは費用や準備の負担が少なく、中小企業でも取り組みやすい活動です。
💡 ポイント:まずは掲示物を貼り、朝礼などで一言触れることから始めてみましょう。
準備期間の総点検、栃木の中小企業が優先すべき3項目
準備期間には、メンタルヘルス・女性の健康課題・冬に向けた対策の3項目を優先的に点検することをおすすめします。いずれも令和8年度の重点事項です。

メンタルヘルス(ストレスチェックの集団分析は使えているか)
顧問先を見ていますと、集団分析の結果を産業医に渡して終わり、というケースが少なくありません。
結果は高ストレス者面談だけでなく、職場環境の改善にも活用できます。
この機会に、衛生委員会で集団分析の結果を話し合ってみることをおすすめします。
女性の健康課題(2026年も重点事項)
ある企業では乳がん検診を勧めたところ、従業員から「診断されたら怖い」という声が出ました。
検診結果を受け取る前後のプライバシー確保と、心のケアについて質問を受けたこともあります。
女性の健康課題への対応は令和7年度から重点事項に含まれており、令和8年度は掲載順が(オ)から(イ)に上がり、事業者向けマニュアルの活用など内容もさらに充実しています。
案内文一つにも配慮を添えるだけで、従業員の受け止め方は大きく変わります。
夏の熱中症対策の振り返りと、冬に向けた転倒・腰痛対策
今年の夏は、飲水や休憩を促しても水分を取らない方への対応に悩む場面がありました。
幸い熱中症には至りませんでしたが、来年への課題として振り返っておきたい点です。
これから冬に向けては、路面の凍結やスリップによる転倒が心配される季節です。
整形外科医としての視点からも、腰痛予防対策と合わせた注意喚起をおすすめします。
💡 ポイント:夏の振り返りと冬の備えは、準備期間にまとめて行うと効率的です。
産業医を巻き込むと「形だけ」にならない
衛生講話や衛生委員会での議題化、巡視への同行など、産業医を巻き込むことで週間の取り組みが形だけで終わりにくくなります。
衛生講話を頼む(安全週間で作った講話の経験から)
そのときの参加者の反応は「そんな週間があるんだ」という、素直な驚きが中心でした。
講話を依頼される際は、知りたい内容を事前に教えていただけると助かります。
そこから業種や職場の状況に合わせて、内容をアレンジすることができます。
衛生委員会の議題にする・巡視に同行してもらう
衛生委員会で週間の取り組みを議題にすると、社内で話し合う機会が生まれます。
実際、産業医が巡視に入ることで、照明や騒音など気にされていなかった点に気づけたことがあります。
今後の訪問では、衛生週間に合わせた衛生講話を企画したいと考えています。
50人未満の会社は地域産業保健センターを使う
労働者数50人未満の事業場は、地域産業保健センター(通称:地さんぽ)で医師に相談できます。
健康相談や長時間労働者の面接指導などを、無料で利用できる仕組みです。
💡 ポイント:まずは1つでも産業医との接点を作ることが、形だけで終わらせない近道です。
栃木で使える相談先とまとめ
栃木県内には栃木産業保健総合支援センターや栃木労働局など複数の公的な相談先があります。50人未満の会社は地域産業保健センターが特に心強い存在です。
栃木産業保健総合支援センター・地さんぽ・栃木労働局
栃木産業保健総合支援センターでは、メンタルヘルスや治療と仕事の両立支援などの相談ができます。
50人未満の事業場向けの地域産業保健センターも、同センターの案内から確認できます。
法令に関する相談は、栃木労働局の窓口も活用できます。
今日からできるチェックリスト
まず、社内にスローガンを掲示し、経営者や上長に週間の趣旨を説明しましょう。
次に、ストレスチェックの集団分析結果を、衛生委員会の議題にしてみてください。
最後に、50人未満の会社は、地域産業保健センターへの相談を検討してみましょう。
今後、私自身も顧問先の訪問で、衛生週間に合わせた衛生講話を企画したいと考えています。
💡 ポイント:完璧を目指さず、できることから一つずつ始めることが継続のコツです。
よくある質問
Q. 全国労働衛生週間に参加しないと罰則がありますか?
A. 週間そのものへの参加に罰則はありません。ただし関連する法定義務を怠ると、別途罰則の対象になります。
Q. 栃木県内の中小企業でも今日からできることはありますか?
A. スローガンの掲示と、経営者・上長への簡単な説明から始めるのがおすすめです。
Q. 従業員が50人未満でも産業医に相談できますか?
A. はい。栃木産業保健総合支援センターの地域産業保健センターで、無料相談ができます。
Q. ストレスチェックの集団分析結果はどう活用すればいいですか?
A. 産業医に渡すだけで終わらせず、衛生委員会で共有し職場改善の材料にしましょう。
Q. 女性の乳がん検診を勧める際に気をつけることはありますか?
A. 結果を受け取る前後のプライバシー配慮と、不安な気持ちに寄り添う説明が大切です。
産業医のご契約・ご相談はお気軽に
「どんな産業医が必要か分からない」「まず話を聞いてみたい」という段階でも大丈夫です。
中小企業の状況に合わせた、現実的なサポートをご提案します。
参考文献・参考URL
- 厚生労働省「令和8年度『全国労働衛生週間』を10月に実施」
- 鳥取労働局「令和8年度(第77回)全国労働衛生週間が実施されます」
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
- 栃木産業保健総合支援センター
- 栃木労働局
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的判断・法的判断の代わりとなるものではありません。 産業保健上の具体的な対応については、産業医・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。 掲載内容は執筆時点の法令・ガイドラインに基づいており、最新情報は厚生労働省等の公式サイトをご確認ください。
