令和8年度全国安全週間、栃木・宇都宮の中小企業はどう動くか
「全国安全週間って、ポスターを貼るだけでいいんですよね?」
栃木県内の中小企業の人事担当者から、こんな声をよく耳にします。毎年7月に実施される全国安全週間ですが、形式的な対応で終わっているケースは決して少なくありません。
しかし令和8年度は、第99回という歴史的な節目の年です。転倒による労働災害が4年連続で増加しているいま、栃木・宇都宮の事業者こそ、この機会を会社の安全文化を根本から見直すチャンスとして活かしていただきたいと思います。
この記事では、産業医として栃木県内の企業を訪問してきた立場から、安全週間の正しい活用法を具体的にご説明します。
📋 この記事の目次
- 令和8年度全国安全週間とは?スローガン・期間・背景を押さえましょう
- 中小企業こそ全国安全週間に取り組むべき理由があります
- 準備期間(6月1〜30日)に栃木の中小企業がすべき3つのことがあります
- 本番週間(7月1〜7日)の具体的な取り組みプランをご紹介します
- エイジフレンドリー補助金など使える支援制度をフル活用しましょう
- 安全週間を「形だけ」で終わらせないための3つのポイントです
- よくある質問
令和8年度全国安全週間とは?スローガン・期間・背景を押さえましょう
結論:令和8年度全国安全週間は7月1日〜7日に実施されます。第99回という節目の年に「多様な人材 全員参加 みんなで育てる安全職場」をスローガンに掲げ、国を挙げて職場の安全意識向上に取り組む週間です。
第99回目を迎える2026年度の概要
全国安全週間は、1928年(昭和3年)から続く国民的な安全運動です。令和8年度はその第99回目にあたる、歴史的な節目の年となります。
実施スケジュールは以下のとおりです。
| 期間 | 内容 |
|---|---|
| 6月1日(月)〜6月30日(火) | 準備期間:計画立案・環境整備を進める |
| 7月1日(水)〜7月7日(火) | 全国安全週間(本番):安全大会・各種取り組みを実施する |
主催は厚生労働省と中央労働災害防止協会(中災防)です。国が率先して職場の安全意識を高める取り組みであり、企業にとっては年間の安全活動を点検・強化する絶好の機会となります。
💡 ポイント:詳細は厚生労働省「令和8年度全国安全週間」公式ページでご確認いただけます。
令和8年度スローガン「多様な人材 全員参加 みんなで育てる安全職場」の意味
今年度のスローガンは全国から公募・選定された言葉です。「多様な人材」「全員参加」というキーワードが示すように、外国人労働者・高年齢者・女性など、多様なバックグラウンドを持つ方が増える現代の職場環境を強く意識した内容となっています。
たとえば、宇都宮市内の製造業や物流業では、外国人技能実習生が現場の一翼を担うケースが増えています。言語の壁があると安全教育が十分に届かないことがあります。「みんなで育てる」という能動的な表現には、そうした課題を職場全体で乗り越えようというメッセージが込められています。
⚠️ 注意:スローガンを社内に掲示するだけでは「全員参加」は実現しません。外国人労働者への多言語対応など、実質的な取り組みとセットで進めることが大切です。
中小企業こそ全国安全週間に取り組むべき理由があります
結論:労働災害は中小企業に集中しており、安全週間への取り組みは労働安全衛生法および労働契約法上の安全配慮義務の観点からも重要です。「義務だからやる」ではなく、経営リスクを下げる投資として前向きに捉えましょう。
労働災害は中小企業に集中している現実があります
厚生労働省が発表した令和7年労働災害発生状況によると、休業4日以上の死傷者数は5年連続で増加しています。なかでも深刻なのが転倒災害です。
令和7年の転倒による死傷者数は37,195人、平均休業日数は47.5日(令和6年度報告)という水準に達しています。
転倒1件で約1か月半の休業が発生するという事実は、中小企業にとっても決して他人事ではありません。
大企業と比べて安全管理の専任担当者が少ない中小企業ほど、こうしたリスクへの対応が後手に回りがちです。
私が実際に訪問したある製造業の企業(従業員80名ほど)では、通路に資材が積み上げられており、「慣れているから大丈夫」と言われていました。しかし高齢の作業員が多くなっており、転倒ヒヤリハットが2か月に1件ほど発生していると聞き、すぐに改善提案を行いました。
こういった職場こそ、安全週間を機に本格的な対策を始めてほしいと思います。
安全週間は「やらされ義務」ではなく経営リスク管理のチャンスです
労働契約法(第5条)および労働安全衛生法第3条に基づき、事業者には労働者の安全・健康を守る安全配慮義務があります。「義務だからやる」という受け身の文脈ではなく、「やることで会社が得をする」という視点で捉え直してみましょう。
労働災害が1件発生した場合のコストは、治療費・休業補償・代替要員の採用費・行政対応まで含めると数百万円規模になることがあります。一方、安全な職場環境を整えている会社は、採用力・定着率の向上にもつながります。「この会社は安全を大切にしている」という評判は、人材確保が難しい栃木県内の中小企業にとっても大きな強みとなります。
準備期間(6月1〜30日)に中小企業がすべき3つのことがあります
結論:6月中に安全大会の日程・講師確保、職場巡視の実施、啓発資料の準備を済ませておくことが、充実した安全週間への近道です。今すぐ動き始めましょう。
①安全大会のテーマ・講師・日程を今すぐ決めましょう
7月の外部講師は、6月上旬には予約が埋まり始めます。宇都宮市内や栃木県内の安全衛生専門家・産業医に依頼する場合も、できるだけ早めに動くことをおすすめします。
今年度の重点施策は「転倒予防・運動プログラムの導入」です。
理学療法士や産業医を招いた体験型研修にすると、参加者の記憶に残りやすく、翌日からの行動変容にもつながります。
💡 ポイント:社内での開催が難しい場合は、オンライン形式でも安全大会を実施できます。規模や予算に合わせた「最小限の形」から始めてみましょう。
②職場の安全パトロール・リスクアセスメントを実施しましょう
準備期間中に安全衛生担当者が全現場を巡視し、危険箇所を洗い出してください。特に高年齢の労働者が多い現場では、転倒リスク箇所の特定を優先することが大切です。
チェックすべき主なポイントはこちらです。
- 通路の幅・段差・障害物の有無
- 床面の状態(濡れ・油・摩耗)
- 照明の明るさ(暗所・死角がないか)
- 重量物の保管場所と動線
- 転倒防止マット・手すりの設置状況
⚠️ 注意:従業員50人未満の事業場では安全衛生委員会の設置義務はありませんが、担当者1人からでも始められます。中災防の無料チェックリストも積極的に活用してみてください。
③スローガン掲示・社内啓発ツールの準備を進めましょう
厚生労働省や中災防のサイトから、ポスター・ステッカーを無料でダウンロードできます。休憩室・更衣室・通路など、目につく場所に掲示しましょう。
外国人労働者が在籍している事業場では、多言語版のツールを活用して「全員参加」を文字どおり実現してください。朝礼でのスローガン読み合わせなど、習慣化できる仕掛けも効果的です。
💡 ポイント:中央労働災害防止協会(jisha.or.jp)では、安全週間関連の無料資料を多数提供しています。
本番週間(7月1〜7日)の具体的な取り組みプランをご紹介します
結論:安全大会では経営トップが自ら安全への決意を表明することが重要です。今年度の重点課題である転倒・腰痛予防の実践的な取り組みを週間中に始めましょう。
安全大会の進め方:経営トップの「所信表明」が鍵です
安全大会の冒頭で、社長や経営者が自ら「今年の安全への決意」を言葉にすることが、職場全体の安全意識を大きく変えます。経営トップが出席するだけで、安全週間の本気度が現場に伝わるものです。
効果的な安全大会のプログラム例はこちらです。
- 経営トップによる安全方針・決意表明(5〜10分)
- 前年の労災・ヒヤリハット実績の報告(10分)
- 無災害達成部門・ヒヤリハット報告優秀者の表彰(5分)
- 外部講師による講演または体験型研修(30〜45分)
- 部署ごとに「今年のアクションプラン」を3分発表(参加型)
表彰や発表を取り入れることで、現場が「自分ごと」として安全活動に参加する文化が生まれます。形だけの安全大会にしないためにも、ぜひこうした仕掛けを取り入れてみてください。
転倒・腰痛予防:今年度の重点課題への対応が必要です
令和8年度の実施要綱では「運動プログラムの導入及び労働者のスポーツ習慣化」が重点施策に挙げられています。毎年7月になると「安全週間だから何かやらないといけない」と慌てて連絡してくる会社があります。形式的なポスター掲示で終わることが多く、記録すら残っていないケースも少なくありません。こういった状況にある栃木・宇都宮の事業者こそ、今年から具体的な行動に移してほしいと思います。
面談で「最近腰が痛い」という訴えが増えています。50〜60代の作業員が多い現場では、加齢による体力低下に気づかず無理を続けている方が少なくありません。安全週間は、こうした身体的リスクを職場全体で共有する絶好の機会です。
明日からでも始められる具体策をご紹介します。
- 朝礼で5分間のストレッチ・転倒予防体操を導入する
- 転倒予防体操の動画を社内掲示板・休憩室モニターで共有する
- 腰痛・膝痛のある作業員に対し、産業医や保健師が個別面談を実施する
- 重量物の取り扱いルールを見直し、台車・リフトなどの補助具活用を徹底する
エイジフレンドリー補助金など使える支援制度をフル活用しましょう
結論:エイジフレンドリー補助金(補助率1/2・上限100万円)や産業保健総合支援センターの無料サービスを活用すれば、コストを抑えながら安全対策を着実に強化できます。
エイジフレンドリー補助金「専門家総合対策コース」の概要
厚生労働省が実施する「エイジフレンドリー補助金(専門家総合対策コース)」は、高年齢労働者が在籍する中小企業を対象とした補助金です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 高年齢労働者(60歳以上)が在籍する中小企業 |
| 補助率 | 対象費用の4/5(第1段階) 1/2(第2段階) |
| 上限額 | 100万円 |
| 活用例 | 理学療法士・作業療法士による転倒予防・腰痛予防の運動指導 |
| 第1段階申請締め切り | 8月31日 |
安全大会の外部講師費用や運動プログラムの指導費用に充てることができます。7月の安全週間中から動き始めると、申請準備が自然なタイミングで整います。「費用がかかるから後回し」ではなく、補助金を使えば実質半額で実施できることを覚えておいてください。
💡 ポイント:詳細・申請方法は厚生労働省のエイジフレンドリー補助金ページでご確認ください。
産業保健総合支援センター(さんぽセンター)の無料活用
栃木産業保健総合支援センター(さんぽセンター)は、栃木県内の事業場であれば無料で相談・サービスを利用できます。「産業医を選任するほどの規模ではない」「費用が心配」と感じている宇都宮市内や栃木県内の中小企業経営者の方に、ぜひ知っていただきたいサービスです。
利用できる主なサービスは以下のとおりです。
- 産業保健に関する専門家(産業医・保健師・労務担当者)への無料相談
- 職場巡視のアドバイス・同行支援
- 安全週間に合わせた健康教育・出前講座の無料依頼
- 産業医が不在の50人未満の小規模事業場でも利用可能
まずは電話1本で相談できます。専門家が栃木・宇都宮の事業場の実情に合わせて丁寧に対応してくれますので、ぜひ気軽にご活用ください。
安全週間を「形だけ」で終わらせないための3つのポイントです
結論:KPIの設定と現場の声を集める仕組みを整えることで、安全週間を年1回のイベントで終わらせず、年間を通じた安全活動へとつなげることができます。
KPI(目標指標)を設定して年間の安全活動につなげましょう
「7月だけ頑張る」を避けるために、安全週間中に年間の安全目標を設定しておきましょう。目標はSMART原則(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限付き)で作成することをおすすめします。
具体的な目標の例はこちらです。
- ヒヤリハット報告を月5件以上収集する
- 職場巡視を毎月実施し、記録を必ず残す
- 朝礼ストレッチを週4日以上継続する
- 転倒リスク箇所を8月末までに全箇所改善する
月次の安全衛生会議でこれらの進捗を確認し、12月に振り返ることで翌年の計画へとつなげていきましょう。
安全活動を「イベント」から「日常」へと変えることが最終的な目標です。
現場からの声を拾う仕組みが「自分ごと化」を生みます
経営層だけで決めた安全対策は、現場にはなかなか浸透しません。安全週間中に「危険箇所カード」や匿名アンケートを使って、現場の声を広く集めてみましょう。
集めた意見を次回の安全大会で発表・反映することで、「自分が言ったことが活かされた」という体験が生まれます。この積み重ねが、今年度のスローガン「みんなで育てる安全職場」を文字どおり実現することにつながります。
外国人労働者・パートタイマー・高年齢者など多様な人材それぞれが発言しやすいように、多言語対応や無記名方式を取り入れることも大切です。安全は押し付けるものではなく、全員で育てるものです。
栃木・宇都宮の中小企業でも、今年の安全週間からそんな職場づくりを始めてみませんか。
よくある質問
Q. 全国安全週間への参加は法律で義務付けられていますか?
A. 全国安全週間への参加自体に法的な義務はありません。ただし労働契約法第5条の安全配慮義務は常に適用されるため、安全活動への継続的な取り組みは事業者としての法的責任です。
Q. 従業員10人以下の会社でも安全週間に取り組む意味はありますか?
A. はい、規模に関わらず取り組む意義があります。ポスター掲示と朝礼でのスローガン読み合わせだけでも安全意識の向上につながります。さんぽセンターの無料相談も活用してみてください。
Q. 安全大会は必ず外部講師を呼ばないといけませんか?
A. 外部講師は必須ではありません。社内の安全担当者が進行し、現場からのヒヤリハット発表や危険箇所紹介をメインにする形でも十分です。費用ゼロでも開催できます。
Q. エイジフレンドリー補助金の対象になる会社の規模はどのくらいですか?
A. 高年齢労働者(60歳以上)が在籍する中小企業であれば、従業員数の下限はありません。詳細な要件は厚生労働省の公式ページでご確認ください。申請前に要件を必ず確認することをおすすめします。
Q. 栃木のさんぽセンターはどこに相談すればよいですか?
A. 栃木産業保健総合支援センター(さんぽセンター)に直接お問い合わせください。産業医・保健師・労務担当者などの専門家が無料で対応しており、栃木県内の全事業場が利用できます。
Q. 安全週間の取り組みはどのような記録を残せばよいですか?
A. 安全大会の議事録・写真・参加者名簿、職場巡視のチェックリスト、ヒヤリハット報告書などを保管しましょう。万一の労働基準監督署の調査時にも安全活動の証明になります。
Q. 外国人労働者への安全教育はどうすればよいですか?
A. 中災防や厚生労働省が多言語版の安全教育資料を無料公開しています。母国語での安全教育が理解の深さに大きく影響するため、今年度スローガン「全員参加」の実現に向けて積極的に活用してみてください。
産業医のご契約・ご相談はお気軽に
「どんな産業医が必要か分からない」「まず話を聞いてみたい」という段階でも大丈夫です。
中小企業の状況に合わせた、現実的なサポートをご提案します。
参考文献・参考URL
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的判断・法的判断の代わりとなるものではありません。 産業保健上の具体的な対応については、産業医・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。 掲載内容は執筆時点の法令・ガイドラインに基づいており、最新情報は厚生労働省等の公式サイトをご確認ください。
