高ストレス者面談とは?栃木企業担当者向け解説
栃木県内の企業で人事を担当されている方の中には、ストレスチェックで高ストレス者が出た後の対応に戸惑ってしまう方が少なくありません。
「面談の案内を出しても申し出がない」「面談が終わった後、会社として何をすべきかわからない」
――そのようなお悩みをお持ちではないでしょうか。
この記事では、産業医として栃木県内の企業に関わる立場から、高ストレス者面談の義務・流れ・面談後の措置・受診率を上げる工夫まで、実務に即してわかりやすくお伝えします。
📋 この記事の目次
- 高ストレス者とは?ストレスチェックの判定基準
- 面接指導の義務と法的根拠
- 高ストレス者面談の流れ・ステップ
- 面談を受けてくれない場合の対応策
- 面接指導の結果を職場改善に活かす方法
- まとめ:すぐ使えるチェックリスト
- よくある質問
高ストレス者とは何でしょうか?ストレスチェックの判定基準をわかりやすく解説します
高ストレス者とは、ストレスチェックの結果に基づいて「面接指導が必要」と判断された労働者のことです。
全体の約10%が該当するよう設計されています。
高ストレス者の定義と全体に占める割合
ストレスチェックでは、職業性ストレス簡易調査票(57項目)を用いて、
①仕事の量・質
②心身のストレス反応
③周囲のサポート
という3つの領域を評価します。
高ストレス者の判定には2つの方法があります。
1つ目は「合計点数による方法」で、素点換算後の合計が事業場の設定基準を超えた場合に該当します。
2つ目は「尺度ごとの素点換算による方法」で、心身のストレス反応が特に高い場合などに判定されます。
厚生労働省のマニュアルでは、全体の約10%が高ストレス者として判定されるよう設計されていますが、「会社の中でストレスが高い人を上位10%選ぶ」という仕組みではありません。あらかじめ決められた点数以上になった人が、高ストレス者と判定されます。この点数は、全国約20万人のデータをもとに決められています。 この基準を全国の人に当てはめると、およそ10%が高ストレス者になるため、「約10%」という数字が使われています。
⚠️ 注意:「高ストレス者=深刻な状態にある」という誤解が労働者の不安を生みます。あくまでストレスの負荷が相対的に高い状態を示す判定であることを、案内の際に丁寧に伝えることが大切です。
高ストレス者に選ばれたら何が起きるのでしょうか?通知の流れ
ストレスチェックの結果は、実施者(産業医や保健師など)から本人に直接通知されます。事業者(会社)には、原則として本人の同意なく結果が渡ることはありません。
通知を受けた労働者は、以下の流れで面接指導を受けることができます。
- 実施者から「面接指導が必要」という通知と申し出の案内が届く
- 労働者が自らの意志で事業者に申し出る
- 事業者が産業医等に依頼し、日程を調整する
- 申し出から概ね1か月以内に面接指導を実施する
💡 ポイント:「面談を申し出ると会社に高ストレスだとバレる」という誤解が受診率を下げる最大の原因です。守秘義務(本人の同意なく情報を会社に伝えない義務)を案内文に明記することが、最初の一歩となります。
ストレスチェック後の面接指導とは何でしょうか?
〜義務と法的根拠を確認しましょう〜
高ストレス者が申し出た場合、事業者には面接指導を実施する義務があります(労働安全衛生法第66条の10)。申し出を強制することはできませんが、申し出があれば必ず実施しなければなりません。
面接指導は事業者の義務でしょうか?労働安全衛生法の規定
労働安全衛生法第66条の10は、ストレスチェックの結果に基づく面接指導の実施を事業者に義務付けています。
ただし、面接指導を受けるかどうかは労働者自身の判断に委ねられており、会社が強制することはできません。「労働者が申し出た場合」に事業者の実施義務が発生する、という仕組みです。
なお、これまで常時50人以上の事業場にストレスチェックの実施が義務付けられていましたが、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、50人未満の小規模事業場にも段階的に義務が拡大されています。宇都宮市をはじめ栃木県内の中小企業の方も、早めに制度の準備を進めておくことをおすすめします。
関連記事:50人未満も義務化へ!ストレスチェック、いつ・何をすれば?
面接指導を実施できる医師の要件はどうなっていますか?
面接指導は、原則として産業医が担当します。産業医の選任義務がない事業場(常時50人未満など)では、労働者の健康管理を行う医師が担当することも認められています。
なお、実施者であっても保健師では面接指導を行うことはできません。同じ実施者であっても、医師と保健師では役割が異なります。
💡 ポイント:産業医が選任されていない栃木県内の中小企業でも、外部産業医サービスや栃木産業保健総合支援センターへの相談を通じて、面接指導の体制を整えることができます。
高ストレス者面談の流れを、実務担当者向けにSTEP別に解説します
高ストレス者面談は「案内→申し出→面接指導→意見聴取→措置」という流れで進みます。各STEPに期限が定められているため、スケジュール管理が重要です。
STEP1:労働者への案内と申し出の受付
まず、高ストレス者と判定された労働者に対して、面接指導の案内を行います。書面やメールで案内し、申し出の窓口(担当者・連絡先)を明示しましょう。
- 実施者からの結果通知と同時に案内文を送付する
- 案内文に「守秘義務あり」「不利益取り扱い禁止」「申し出先の連絡先」を明記する
- 申し出を受けた記録(日時・方法)を残す
- 申し出から概ね1か月以内に面接指導を実施するスケジュールを確保する
⚠️ 注意:申し出の記録は実施の証拠になるため、必ず保管しておきましょう。口頭での申し出は、書面やメールで確認を取っておくことをおすすめします。
STEP2:面接指導当日の内容・医師が確認すること
面接指導当日、医師は主に以下の内容を確認します。
- 業務の状況(残業時間・業務量・職場の人間関係)
- 心身の状態(睡眠・食欲・気分・身体症状の有無)
- 本人のストレス要因と対処方法
面接指導は、労働者を診断・評価する場ではありません。就業上の措置が必要かどうかを医師が判断し、事業者への意見書にまとめるための場です。
💡 ポイント:「面談で何を話せばいいかわからない」と不安に感じる方は多くいます。案内文に「日頃の仕事や体調についてお話しいただければ大丈夫です」と一言添えるだけで、心理的なハードルが大きく下がります。
STEP3:面接指導後の事業者対応と就業上の措置
面接指導の後、医師は就業上の措置の必要性について意見書を作成します。事業者は医師の意見を踏まえて、必要な措置を講じなければなりません(労働安全衛生法第66条の10)。
就業上の措置の具体例は以下のとおりです。
- 時間外労働の上限設定・削減
- 業務量・業務内容の見直し
- 配置転換や職場環境の調整
- 医療機関への受診勧奨
面接指導の実施記録と医師の意見書は5年間保存する義務があります。また、面接指導を申し出たことや受けたことを理由とした不利益な取り扱い(降格・減給・解雇等)は、労働安全衛生法第66条の10により禁止されています。
💡 ポイント:「面談を受けると査定に影響する」という誤解が辞退につながります。不利益取り扱い禁止の旨を案内文と社内周知に必ず明記し、安心して申し出られる環境をつくりましょう。
高ストレス者が面談を受けてくれない場合は、どう対応すればよいのでしょうか?
面接指導の申し出は強制できませんが、「申し出やすい空気をつくること」は事業者の重要な取り組みです。案内文の工夫と職場の雰囲気づくりが受診率向上につながります。
面談辞退の主な理由と実態
高ストレス者のうち、面接指導を実際に申し出る割合は多くても10%程度と言われています。残りの大半の方が申し出ないまま終わっているのが実態です。
面談を辞退する主な理由は以下のとおりです。
- 「面談内容が上司や会社に伝わるのではないか」(守秘義務への誤解)
- 「精神的に弱い人間と思われるのではないか」(スティグマへの不安)
- 「受けても何も変わらない」(面談の意義への疑問)
- 「業務が忙しくて時間が取れない」(物理的な障壁)
💡 ポイント:高ストレス者の過半数が面談を受けないまま終わるという実態があります。制度を「設ける」だけでは機能しません。いかに申し出やすい空気をつくるかが、担当者の腕の見せどころです。
受診率を上げるための実務的アプローチ
私が産業医として関わっているある企業では、ストレスチェックで高ストレス判定が出た方が毎年一定数いるものの、面談を申し出る方がほとんどいませんでした。人事担当者の方と相談し、案内文の書き方を変えて「面談は評価に一切影響しません」と明記したところ、翌年から申し出が少しずつ増えました。制度を用意することより、申し出やすい空気をつくることが難しいのだと実感した出来事です。
受診率を上げるために、今すぐ実行できる対策をご紹介します。
- 案内文の冒頭に「守秘義務あり・不利益取り扱い禁止」を明記する
- 保健師や外部EAP(従業員支援プログラム)との相談も選択肢として提示する
- 管理職が「面談を受けることは賢明な行動だ」と語る社内コミュニケーションを行う
強制はできませんが、申し出やすい環境づくりは事業者の責務でもあります。案内文の文言を見直すことは、コストをかけずに今すぐ始められる取り組みです。
面接指導の結果を、職場改善・メンタルヘルス対策に活かす
面接指導は個人の問題解決だけでなく、組織全体の課題を発見する入口でもあります。
集団分析と組み合わせることで、職場環境改善のPDCAを回すことができます。
集団分析と個人対応を組み合わせた職場環境改善
個人の面接指導結果は、匿名集計として部署単位の集団分析に活用できます。
「この部署はストレス反応が高い」「サポートの数値が低い部署がある」という傾向をつかむことで、組織的な課題を特定できます。
- 産業医の意見書をもとに、特定部署の労働時間・業務分担・コミュニケーションの見直しを行う
- 衛生委員会で分析結果を共有し、職場改善計画を立案する
- 翌年のストレスチェック結果と比較し、改善効果を確認するPDCAを回す
💡 ポイント:集団分析の実施は努力義務として定められており、罰則を伴う義務ではありません。
ただし、職場環境改善の根拠として非常に有用です。
ストレスチェックを単なる義務として終わらせず、職場改善のツールとして活用しましょう。
面談後のフォローアップ体制の整え方
人事担当者の方からよく聞かれるのが「高ストレス者の面談が終わった後、会社は何をすればいいのか」という質問です。面談結果を受けて就業上の措置を検討する流れが法律で定められているのですが、実務でどう動けばいいか分からず戸惑う担当者の方は少なくありません。
私は面談後に人事担当者の方と一緒に、本人の同意の範囲内でできる対応を整理するようにしています。面談した本人から「どこまで会社に伝えてもよいか」を確認し、その範囲内で措置の内容を検討するのです。
フォローアップ体制として、以下の取り組みをおすすめします。
- 面接指導後1〜3か月を目安に、産業医・保健師によるフォロー面談を設ける
- 必要に応じて精神科・心療内科への受診を勧奨し、休職支援制度と連携させる
- 継続的な相談窓口(EAP・産業医面談)を社内に周知しておく
💡 ポイント:「面談して終わり」にしないことが最も重要です。面接指導を起点にした継続支援が、早期対応と職場定着への近道となります。
まとめ:高ストレス者面談を形式で終わらせないための3つのポイント
制度を形式的に整えるだけでなく、本当に機能させるためにこの3点を押さえてください。栃木・宇都宮の企業担当者の方も、今すぐ自社の対応を点検してみましょう。
担当者がすぐ使えるチェックリスト
以下の3点を確認してみてください。
- ✅ ①高ストレス者への案内文に「守秘義務あり」「不利益取り扱い禁止」を明記しているか
- ✅ ②面接指導の申し出から概ね1か月以内に実施できるスケジュールを確保しているか
- ✅ ③面接指導後の医師意見聴取・就業上の措置・記録保存(5年間)まで一連の流れを整備しているか
この3点がすべて「はい」と言える体制を整えることが、法令対応の基本です。産業医との連携や制度設計でお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。栃木・宇都宮の企業の実情に合わせたサポートが可能です。
よくある質問
Q. 高ストレス者が面談を申し出なかった場合、会社に罰則はありますか?
A. 面接指導の申し出は労働者の自由意志に委ねられているため、申し出がなくても事業者への罰則はありません。ただし、申し出があったにもかかわらず事業者が実施しなかった場合は法令違反となります。
Q. 産業医がいない場合、誰が面接指導を実施できますか?
A. 産業医の選任義務がない事業場では、労働者の健康管理を行う医師が面接指導を実施できます。外部産業医サービスや栃木産業保健総合支援センターへの相談も有効な手段です。
Q. 面接指導で話した内容は上司や会社に伝わりますか?
A. 本人の同意なく、面接指導の詳しい内容が会社や上司に伝わることはありません。医師から事業者への報告は就業上の措置の要否などに限られ、守秘義務が守られます。
Q. 面接指導の記録はどのくらいの期間保存しなければなりませんか?
A. 面接指導の実施記録と医師の意見書は5年間保存する義務があります。適切に管理・保存できる体制を整えておきましょう。
Q. ストレスチェックの集団分析は必ずしなければなりませんか?
A. 集団分析は努力義務として定められており、罰則を伴う義務ではありません。ただし、職場環境改善の根拠として非常に有用であるため、積極的に活用することをおすすめします。
産業医のご契約・ご相談はお気軽に
「どんな産業医が必要か分からない」「まず話を聞いてみたい」という段階でも大丈夫です。
中小企業の状況に合わせた、現実的なサポートをご提案します。
参考文献・参考URL
- 長時間労働者、高ストレス者の面接指導について|こころの耳(厚生労働省)
- ストレスチェック制度について(リーフレット)|厚生労働省
- 小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル 令和8年2月|厚生労働省
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的判断・法的判断の代わりとなるものではありません。 産業保健上の具体的な対応については、産業医・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。 掲載内容は執筆時点の法令・ガイドラインに基づいており、最新情報は厚生労働省等の公式サイトをご確認ください。



