二次健診の受診率、栃木の会社はどう上げる?
事業者様から、「健康診断で要精密検査となった社員が、なかなか二次健診を受けてくれない」というご相談をよくいただきます。
この記事では、産業医の立場から二次健診の受診率を上げるための具体策と、栃木県内で使える公的支援制度をわかりやすく解説します。

📋 この記事の目次
- そもそも二次健診(精密検査)とは?義務との関係を整理しましょう
- 二次健診の受診率が低いのは、なぜなのでしょうか?
- 受診率を高めるには、どのような施策が有効でしょうか?
- 産業医・産業保健スタッフを活用するメリットとは?
- よくある質問
そもそも二次健診(精密検査)とは?義務との関係を整理しましょう
二次健診とは、健康診断で「要再検査」と判定された方が受ける保険診療の検査で、受診自体は法律上の義務ではありませんが、企業には受診を勧める努力義務があります。
二次健診(精密検査)とは何か
健康診断結果表で「要精密検査」「要再検査」と判定された場合に受ける、追加の検査を指します。
一次健診は事業者の負担で行いますが、二次健診は健康保険を使う保険診療として扱われます。
正式には「二次健診」と表記します。労働安全衛生法に基づく健康診断のフォローという意味だからです。
「二次検診」という表記も見かけますが、「検診」はがん検診など特定の病気を対象にした検査に使う字です。表記ゆれとして広く使われていますので、気にしすぎなくて大丈夫です。
企業・従業員それぞれの義務の有無
二次健診そのものを受診する義務は、従業員にも企業にもありません。
ただし労働安全衛生法第66条の7は、事業者に対して保健指導を行う努力義務(必ずしも達成しなくてよいが、努力すべき義務)を定めています。
受診勧奨を怠り、健康被害が拡大した場合は、安全配慮義務(労働契約法第5条)違反を問われるおそれがあります。
義務ではないからと放置すると、安全配慮義務違反の事例のように、後から経営リスクとなることがあります。
二次健診の受診は義務ではありませんが、放置は企業のリスクになると心得ておきましょう。
💡 ポイント:「要精密検査」は保険診療扱いのため、健診結果表の見方を従業員にも説明しておくと親切です。
二次健診の受診率が低いのは、なぜなのでしょうか?
二次健診の受診率が低い背景には、自覚症状のなさ、時間的・金銭的なハードル、会社側の働きかけ不足という3つの理由があります。
自覚症状がなく必要性を感じにくい
高血圧や脂質異常症など、生活習慣病の多くは自覚症状がないまま進行します。
「体調は悪くないから大丈夫」という心理が、受診の先送りにつながります。
私が訪問しているある製造業の事業所でも、要精密検査となった十数名のうち、実際に受診したのは半数以下でした。
面談でお話を伺うと、多くの方が「忙しいから」とおっしゃいます。自覚症状がないからこそ後回しにされる、これが二次健診最大の壁だと感じています。
時間的・金銭的なハードル
平日の日中に休みを取ってまで受診するのは気が引ける、という声もよく聞きます。
特に交代勤務や少人数の職場では、自分が抜けると現場が回らないという不安が働きます。
受診費用が自己負担になる不安や、受診先が分からないという情報不足も、ハードルの一つです。
会社からの働きかけ不足
健診結果を配って終わり、という会社では受診率が上がりにくい傾向にあります。
ある企業では、担当者に「誰が未受診かご存知ですか」と伺ったところ、一覧表すらありませんでした。
反対に受診率が高い会社は、例外なく未受診者リストを作り、個別に声かけを行っています。
これは責める話ではありません。健診を実施しただけで終わらせない事後措置のように、仕組みを整えれば改善できます。
受診率の低さは、自覚症状・時間や費用・会社の仕組みという3つの壁が重なった結果です。
💡 ポイント:未受診者リストの有無だけでも、受診率は大きく変わります。
受診率を高めるには、どのような施策が有効でしょうか?
個別フォローの仕組み化、時間内受診など制度整備、ナッジ理論の活用、そして無料で使える公的給付制度の周知が有効です。
個別通知と継続的なフォローアップ
一斉通知だけでなく、対象者一人ひとりへの個別の声かけが効果的です。
産業医や保健師による面談を通じて、なぜ受診が必要かを個別に説明する方法もあります。
未受診者には数週間おきにリマインドを送るなど、継続的な運用が受診率向上の鍵となります。
就業時間内受診や費用補助などの制度整備
特別休暇の付与や、就業時間内の受診を認める制度化が有効です。
ある事業所では、就業時間中の受診を認める運用に変えたところ、翌年の受診率が明らかに改善しました。
受診費用の一部補助や、提携医療機関リストの配布も、手間を減らす工夫になります。
ナッジ理論を活用した伝え方の工夫
ナッジ理論とは、強制せずに望ましい行動をそっと後押しする、行動科学の考え方です。
「多くの社員がすでに受診しています」といった一文は、受診率向上に役立ちます。
「受診しないとリスクがあります」ではなく「受診すれば安心できます」と、前向きな表現に変えるだけでも効果があります。
労災保険の「二次健康診断等給付」を使えるか確認する
血圧・血中脂質・血糖・腹囲(またはBMI)の4項目すべてに異常の所見がある方は、二次健康診断等給付の対象になる可能性があります。
要件を満たせば、二次健診と特定保健指導を1年度内に1回、無料で受けられる制度です。
ただし請求には期限があり、原則として一次健康診断を受けた日から3か月以内に手続きをする必要があります。この期限を過ぎると給付を受けられないため、健診結果が届いたら早めに案内することが大切です。
受診できるのは、都道府県労働局が指定した「健診給付病院等」に限られます。
栃木県内の指定病院は、栃木労働局のサイトで確認できます。要件や期限は変更される場合があるため、必ず公的サイトでご確認ください。
個別フォローと制度整備に加え、無料で使える公的給付の周知が受診率向上の近道です。
💡 ポイント:費用の壁は「二次健康診断等給付」の案内一つで下げられることがあります。
産業医・産業保健スタッフを活用するメリットとは?
専門職からの説得力ある説明に加え、健康経営の評価向上や、50人未満なら無料の公的支援活用など、産業保健スタッフの関与にはメリットが多くあります。
専門的な立場からの受診勧奨の説得力
医療の専門職から直接説明を受けると、従業員の納得感は高まります。
面談を通じて、個別の数値がどのようなリスクにつながるかを、医学的根拠とともに伝えられます。
人事担当者だけでは伝えきれない部分を、産業医が補う形です。
健康経営の取り組みとしての位置づけ
二次健診の受診率向上は、健康経営度調査の評価項目の一つにもなっています。
従業員の生産性向上や休職予防、中長期的な医療費・労災リスクの低減にもつながります。
健康経営の第一歩として、二次健診対策から取り組む企業様も増えています。
50人未満の事業場は地域産業保健センターを無料で使える
従業員50人未満の事業場には産業医の選任義務はありませんが、地域産業保健センターを無料で利用できます。
健診結果についての医師の意見聴取や、二次健診が必要な従業員への保健指導を依頼できます。
栃木県内の窓口は、栃木産業保健総合支援センターを通じて確認できます。
ただし利用回数には上限があり、継続的なフォローには限界もあります。
従業員が50人を超えるタイミングで、嘱託産業医の契約を検討する企業様が多い理由はここにあります。
| 項目 | 地域産業保健センター | 嘱託産業医 |
|---|---|---|
| 対象 | 50人未満の事業場 | 50人以上〜999人の事業場 (法的義務) |
| 費用 | 無料 | 契約による顧問料 |
| 利用回数 | 同一事業場は原則2回まで | 契約に応じて継続的に対応 |
なお、従業員50人未満の事業場に産業医の選任義務はありませんが、任意で嘱託産業医と契約することもできます。
専門職の関与は、受診率向上と健康経営の両方に効果があります。
💡 ポイント:50人未満でも無料の公的支援があります。まずは地域産業保健センターへの相談から始めてみましょう。
栃木県・宇都宮市内で産業医をお探しの場合は、産業医の選び方や契約までの流れもあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 二次健診を受けない従業員に、会社は受診を強制できますか?
A. 強制はできませんが、受診勧奨は事業者の努力義務です。面談などで丁寧に必要性を伝えましょう。
Q. 二次健診の受診率が低いままだと、会社にどんなリスクがありますか?
A. 安全配慮義務違反を問われ、労災発生時に責任を追及されるおそれがあります。早めの対策をおすすめします。
Q. 二次健康診断等給付は誰でも使えますか?
A. 血圧・血中脂質・血糖・腹囲(BMI)の4項目すべてに異常所見がある方が対象です。詳細は労働局にご確認ください。
Q. 従業員50人未満でも産業保健の相談先はありますか?
A. はい。地域産業保健センターを無料で利用できます。栃木産業保健総合支援センターにご相談ください。
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「どんな産業医が必要か分からない」「まず話を聞いてみたい」という段階でも大丈夫です。
中小企業の状況に合わせた、現実的なサポートをご提案します。
参考文献・参考URL
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的判断・法的判断の代わりとなるものではありません。 産業保健上の具体的な対応については、産業医・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。 掲載内容は執筆時点の法令・ガイドラインに基づいており、最新情報は厚生労働省等の公式サイトをご確認ください。



