健康経営とは?栃木の中小企業経営者が知るべき基本と始め方
栃木県の経営者や人事担当者の方から、「健康経営という言葉はよく耳にするけれど、正直よくわかっていない」「うちも何かやったほうがいいとは思うが、何から始めればいいのか」というご相談をよく受けます。
産業医として栃木県内の企業を訪問していると、こうした声は本当によく聞かれます。そして実は、すでに実施している健康診断やストレスチェックも、健康経営の立派な一部なのです。そうお伝えすると「え、それでいいんですか」と驚かれる方がほとんどです。
この記事では、健康経営の基本から、栃木県の中小企業が今すぐ取り組める具体的なステップまでを、産業医の視点からわかりやすくお伝えします。
📋 この記事の目次
- 健康経営とは何でしょうか?基本的な定義をわかりやすく解説します
- 健康経営が今、栃木県でも注目されるのはなぜでしょうか
- 健康経営優良法人認定制度とはどのような仕組みでしょうか
- 健康経営に取り組むと、どんなメリットがあるのでしょうか
- 栃木の中小企業が健康経営を始める具体的なステップとは何でしょうか
- よくある質問
健康経営とは何でしょうか? 〜基本的な定義を解説〜
健康経営とは、従業員の健康管理を「コスト」ではなく「投資」として捉え、経営的な視点で戦略的に推進する取り組みです。
健康経営の定義(経済産業省の公式見解)
「健康経営」という言葉は、経済産業省が推進する国策レベルの取り組みです。
経済産業省は、健康経営を「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と定義しています。
簡単に言えば、「従業員を健康にすることが、会社の利益につながる」という考え方です。大企業だけの話ではなく、栃木県内の中小企業にも深く関わる取り組みですので、ぜひ最後までお読みください。
「健康経営」という概念は、NPO法人健康経営研究会が商標登録した言葉が起源ですが、現在は経済産業省が中心となって日本全体で推進されています。
健康管理の「法的義務」と健康経営の違い
まず、企業が法律上果たすべき義務を確認しておきましょう。
事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、従業員に定期健康診断を実施しなければなりません。また、従業員が50人以上の事業場では、労働安全衛生法第13条により産業医の選任義務があります。
しかし「義務だからやる」だけでは不十分な理由があります。それが「プレゼンティーイズム(出勤しているが体調不良等で生産性が低下している状態)」と「アブセンティーイズム(体調不良による欠勤・休職)」の問題です。

法的義務はあくまで「リスク回避」が目的です。
健康経営は「成果創出」が目的であり、この差が企業の競争力に大きく影響します。
💡 ポイント:健康診断を実施するだけでなく、その結果を活かして従業員の健康改善につなげることが、健康経営の第一歩です。
健康経営が注目されるのはなぜか
少子高齢化による労働人口の減少と、プレゼンティーイズムによる生産性損失の深刻化が、健康経営を「やった方がいい話」から「やらなければならない話」に変えています。
少子高齢化と労働人口の減少
栃木県内でも、採用難・人材不足を実感している経営者の方は多いのではないでしょうか。
国立社保人口問研によれば、2040年には現在より約1,100万人もの労働人口が減少する見通しです。宇都宮市を含む栃木県でも、この流れは例外ではありません。
こうした状況では、優秀な人材を採用・定着させる「ブランドづくり」が欠かせません。健康経営に取り組む企業は、求職者から「従業員を大切にしている会社」として選ばれやすくなります。
💡 ポイント:健康経営優良法人の認定を取得することで、求人票への認定ロゴ掲載など、採用活動のブランディングに活用できます。
医療費・休職コストの増大と企業業績への影響
「健康経営はお金がかかる」と思っていませんか。実は逆なのです。
厚生労働省のデータによれば、2024年の定期健康診断有所見率(何らかの異常を指摘された割合)は59.4%に達しています。約6割の従業員が何らかの健康上の課題を抱えている計算です。
プレゼンティーイズムによる生産性損失は、医療費や欠勤コストを大きく上回ることが、経済産業省の調査でも示されています。
またメンタルヘルス不調による休職者が増えると、代替人材の採用・教育コストは数十万〜数百万円規模になります。

💡 ポイント:健康投資は「コスト」ではなく「将来のリスク回避」と捉えることが、健康経営推進の出発点です。
健康経営優良法人認定制度とはどのような仕組みでしょうか
健康経営優良法人認定制度は経済産業省が推進する顕彰制度で、中小企業でも申請でき、申請手数料は無料です。認定取得は採用・融資・入札などで実質的なメリットをもたらします。
制度の概要と大規模法人・中小規模法人の区分
健康経営優良法人認定制度は、2016年度に経済産業省が創設しました。
「健康経営優良法人2026」では、大規模法人部門に3,765法人、中小規模法人部門に23,085法人が認定されました。栃木県内の中小企業からも毎年多くの法人が認定を受けています。
認定を受けると、以下のメリットがあります。
- 採用ブランディング(求人票・会社案内への認定ロゴ掲載)
- 金融機関からの融資優遇
- 公共入札における加点評価
中小規模法人部門の上位500法人には「ブライト500」の冠が付加されます。「うちは中小だから関係ない」という誤解は禁物です。むしろ中小企業こそ、認定によるメリットが大きいといえます。
認定基準・評価項目のポイント(2026年版)
認定基準は「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」の4フレームで評価されます。
中小規模法人部門は以下の3項目から2項目以上を達成することが要件となっています。①定期健診受診率(実質100%) ②受診勧奨の取り組み ③50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施
2026年版の変更点として、女性の健康支援やメンタルヘルス対策の強化が評価項目として重視されています。ストレスチェックの実施や産業医との面談体制の整備が得点につながります。
⚠️ 注意:認定基準は毎年改定されます。最新の要件は必ず経済産業省の公式ページでご確認ください。
健康経営に取り組むメリット
健康経営は企業の生産性向上・採用力強化・コスト削減と、従業員のエンゲージメント向上という両面にメリットをもたらします。
企業側のメリット:生産性向上・採用強化・コスト削減
健康経営に積極的に取り組む企業では、従業員のパフォーマンス向上を通じた業績改善が期待できます。
具体的なメリットは以下のとおりです。
- プレゼンティーイズムの改善による生産性の向上
- 健康経営優良法人ロゴを活用した採用応募数の増加
- 早期対応による医療費・休職コストの削減
「健康経営は費用がかかる」という先入観を持つ方が多いですが、生産性損失の回避や離職コストの削減を考えると、投資回収は十分に期待できます。
💡 ポイント:栃木県内で健康経営優良法人の認定を取得すると、求人票にロゴを掲載でき、求職者への「従業員を大切にしている会社」という印象づけに活用できます。
従業員側のメリット:エンゲージメント・ウェルビーイング向上
経営者・人事担当者だけでなく、従業員にとっても健康経営は大きなメリットがあります。
ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)を重視する企業では、従業員満足度やエンゲージメント(仕事への主体的な関与)が高まることが、各種調査で確認されています。
具体的な施策例としては、ストレスチェック結果を活用した個別面談、EAP(従業員支援プログラム)の導入、運動促進のための補助制度などがあります。
💡 ポイント:心理的安全性が高まり「相談しやすい職場」になることで、メンタルヘルス不調の早期発見・予防にもつながります。
健康経営を始める具体的なステップ
まず既存のデータを集めることから始め、認定申請に向けてPDCAサイクルを回していくことが、栃木県の中小企業でも無理なく進められる王道の進め方です。
Step1:現状把握と課題の見える化
「何から始めればいいかわからない」という方は、まず手元にある既存データを整理することから始めましょう。
特別な分析ツールがなくても、以下のデータで現状把握は始められます。
- 定期健康診断の結果(有所見率・受診率)
- ストレスチェックの集団分析結果
- 欠勤率・残業時間・離職率などの勤怠データ
嘱託産業医と連携すれば、健診データの分析や職場環境改善の提案を受けることができます。栃木産業保健総合支援センターへの相談は無料ですので、ぜひ活用してみてください。
💡 ポイント:産業医・健康保険組合・企業が連携して健康課題に取り組む「コラボヘルス」の体制を構築すると、データ活用がより効果的になります。
Step2:施策の立案・実行と健康経営優良法人認定への道
現状把握ができたら、自社に合った施策を選んで実行します。コストをかけずに始められる施策もたくさんあります。
| 難易度 | 施策例 |
|---|---|
| 低コスト・すぐできる | 禁煙宣言・ノー残業デー・ウォーキング推奨 |
| 中期的に取り組む | ストレスチェック後の面談体制整備・EAP導入 |
健康経営優良法人の認定申請は毎年秋(8月〜10月ごろ)に受付が行われます。来年度の認定に向けて、今から準備を始めることで十分間に合います。
💡 ポイント:商工会議所や地域の健保組合も健康経営の支援を行っています。外部機関をうまく活用することで、少ない担当者でも取り組みを進められます。
Step3:PDCAサイクルで健康経営を継続・改善する
健康経営は一度取り組めば終わりではありません。継続的に改善していく仕組みが重要です。
効果測定には、健康経営度調査や従業員アンケートを活用しましょう。その結果を経営層へ報告し、翌年度の計画に反映させることで、PDCAサイクルが回り始めます。
なお、現在は大企業を中心に人的資本開示(有価証券報告書への従業員の健康・安全に関する情報の記載)が義務化されていますが、中小企業への波及も見込まれています。今から体制を整えておくことで、将来的な対応コストの削減にもつながります。
💡 ポイント:まずは1年目に「定期健診受診率100%」を達成することを目標にすると、健康経営優良法人認定への最初の足がかりになります。
よくある質問
Q. 産業医がいない小規模企業でも健康経営はできますか?
A. できます。従業員50人未満の事業場は産業医の選任義務はありませんが、栃木産業保健総合支援センターを無料で活用できます。嘱託産業医との契約も選択肢の一つで、小規模企業でも十分に健康経営を推進できます。
Q. 健康経営優良法人の認定申請に費用はかかりますか?
A. 申請手数料は無料です。認定取得後は採用・営業活動に認定ロゴを活用でき、コストパフォーマンスの高い取り組みです。栃木県内の中小企業でも多くの法人が認定を取得しています。
Q. 健康経営と働き方改革・ハラスメント対策はどう関係しますか?
A. 三位一体で進めることが理想です。長時間労働の削減・ハラスメント防止・健康経営は「従業員が安心して働ける職場づくり」という共通の目標を持っており、まとめて取り組むことで相乗効果が生まれます。
Q. 既存の健康診断やストレスチェックは健康経営の取り組みになりますか?
A. なります。産業医として栃木県内の企業を訪問すると「うちはまだ何もできていない」とおっしゃる経営者がいらっしゃいますが、すでに健診とストレスチェックを実施している時点で、健康経営の重要な基盤はできています。次のステップを一緒に考えていきましょう。
産業医のご契約・ご相談はお気軽に
「どんな産業医が必要か分からない」「まず話を聞いてみたい」という段階でも大丈夫です。
中小企業の状況に合わせた、現実的なサポートをご提案します。
参考文献・参考URL
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的判断・法的判断の代わりとなるものではありません。 産業保健上の具体的な対応については、産業医・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。 掲載内容は執筆時点の法令・ガイドラインに基づいており、最新情報は厚生労働省等の公式サイトをご確認ください。



