健康診断を実施しただけではNG!事後措置で会社を守る
「毎年きちんと健康診断を実施しているから大丈夫」と思っていませんか?
実は、健康診断は実施して終わりではありません。
結果が出た後に会社がやるべきことが、法律でしっかりと決まっているのです。
この「事後措置」を知らずに放置すると、会社が思わぬリスクを負うことも。
今回は中小企業の社長・人事担当者の方に向けて、健康診断後の正しい流れをわかりやすく解説します。
📋 この記事の目次
健康診断を実施するだけではNG!「事後措置」って何?
健康診断(労働安全衛生法(労働者の安全と健康を守るための法律)第66条に基づく)は、多くの会社が毎年実施しています。
ところが、結果を社員に渡してそれで終わりという会社が少なくありません。
実はこれ、法律違反になる可能性があります。
健康診断後に会社が行うべき一連の対応を、「事後措置」と呼びます。
具体的には、異常所見があった社員に対して医師の意見を聞き、
必要に応じて働き方の調整や職場環境の改善を行うことです。
「そこまでやるの?」と感じる方も多いかと思います。
でもだからこそ、きちんと対応している会社は少なく、差がつきやすいポイントでもあります。
💡 ポイント
健康診断は「実施する義務」と「事後措置を講じる義務」がセットで法律に定められています。結果を社員に渡しただけでは、会社としての義務を果たしたとは言えません。
法律で定められた事後措置の5つのステップ
事後措置には、法律(労働安全衛生法第66条の3〜第66条の7)に基づいた手順があります。
順番通りに進めることが大切です。
ステップ① 健康診断結果を社員に通知する(第66条の6)
健康診断を受けた全員に結果を通知することが義務付けられています。
「異常なし」の人も含め、例外なく通知してください。
ステップ② 異常所見の有無を確認する
結果を確認し、「経過観察」「要再検査」「要精密検査」「要治療」などの判定区分を確認します。
そのうえで、次のステップへ進みます。
ステップ③ 医師(産業医)の意見を聴く(第66条の4)
異常所見があった社員について、健康診断から3ヶ月以内に医師へ意見を聞くことが義務です。
医師は「通常勤務・就業制限・要休業」の3区分で判断を示します。
ステップ④ 社員本人の意見も聞く(第66条の5)
事後措置を決める際は、社員の意見を聴くための体制の整備等、必要な対策することが大切です。
一方的に決めず、本人が納得できる形で進めましょう。
ステップ⑤ 就業上の措置を実施・記録する
医師の意見と本人の状況を踏まえて、具体的な措置を決定します。
措置の内容は健康診断個人票に記録し、5年間保存することが義務です。
💡 ポイント
常時50人以上の従業員がいる事業場は、定期健康診断の結果を所轄の労働基準監督署に報告する義務(労働安全衛生規則第52条)もあります。忘れずに対応しましょう。
「医師の意見聴取」が一番大切な理由
5つのステップの中で、特に重要なのがステップ③の「医師の意見聴取」です。
なぜかというと、ここで示された意見が、その後のすべての判断の根拠になるからです。
医師(産業医)が示す就業区分は、次の3つです:
- 通常勤務:制限なく働ける状態
- 就業制限:労働時間の短縮、深夜業の回数制限、出張制限など
- 要休業:療養に専念するため、休暇・休職が必要な状態
この意見を無視してそのままにしておくと、会社が「安全配慮義務違反(労働契約法第5条)」を問われるリスクがあります。
たとえば、「就業制限」の判断が出ているのに残業させ続け、社員が倒れてしまった場合、
会社の責任が問われることになります。
⚠️ 注意
医師の意見は「参考情報」ではなく、法律上の根拠となる重要な判断です。
意見を聴いたら必ず記録し、内容に応じた対応をとることが求められます。
💡 ポイント
意見聴取は健康診断日から3ヶ月以内に行う必要があります(労働安全衛生法第66条の4・労働安全衛生規則第51条の2)。健診が終わったらすぐにスケジュールを組むと安心です。
事後措置を放置したら?会社が負う3つのリスク
「うちは小さい会社だし、今まで何もなかったから大丈夫」と思っていませんか?
残念ながら、そうとは言い切れません。
事後措置を放置した場合、会社には3つのリスクがあります。
リスク① 法令違反・罰金
健康診断結果の未通知や個人票の不保存は、労働安全衛生法違反として50万円以下の罰金の対象となります(同法第120条)。
「知らなかった」では通りません。
リスク② 安全配慮義務違反による損害賠償
社員が体調不良で倒れた際、会社が事後措置を怠っていたことが原因と認められると、
損害賠償請求を受けるリスクがあります。
医療費・休業補償・慰謝料など、金額が大きくなることもあります。
リスク③ 優秀な人材が離れる
健康管理への対応が不十分な会社は、社員の信頼を失います。
特に若い世代や優秀な人材ほど、健康・働き方への意識が高い傾向があります。
だからこそ、事後措置は採用・定着にも影響する問題なのです。
💡 ポイント
事後措置は「社員のため」だけでなく、「会社を守るため」でもあります。
コストではなく、リスクヘッジへの投資と考えると整理しやすくなります。
50人未満でも安心!使える無料サポートを活用しよう
「産業医(会社と契約する健康管理の専門医師)を選任しなければいけないのは50人以上の会社だから、
うちは関係ない」と思っている方もいるかもしれません。
ですが、事後措置の義務は従業員数に関わらず発生します。
50人未満の会社でも、無料で活用できるサポートがあります。
☆地域産業保健センター(通称:地産保(ちさんぽ))
労働基準監督署の管轄区域ごとに設置されている無料の産業保健サービス機関です。
全国約330か所に拠点があり、50人未満の小規模事業場であれば、
医師への相談・意見聴取・保健指導を無料で受けることができます。
「医師の意見聴取をどうすればいいかわからない」という場合も、ここに相談すれば安心です。
☆産業保健総合支援センター(通称:さんぽセンター)
都道府県ごとに1か所、全国47か所に設置されている産業保健の総合相談窓口です。
事後措置の進め方や書類の整備方法など、産業保健に関する幅広い相談に無料で対応しています。
医師・保健師・労働衛生コンサルタントなどの専門スタッフに直接質問できるのが特徴です。
・独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)が運営する公的機関(厚生労働省所管)です。
・相談・情報提供:無料
💡 ポイント
会社の規模に関わらず、産業保健の専門家に相談できる仕組みが整っています。
「何から始めればいいかわからない」という方こそ、連絡してみましょう。
まず意見聴取の対応をしたい →地産保(ちさんぽ)
事後措置の制度や書類まわりを理解したい →さんぽセンター
まとめ:健診後の動きが会社を守る
健康診断は「実施して終わり」ではありません。
事後措置こそが、社員の健康を守り、会社のリスクを減らす本丸です。
今日から意識してほしいポイントを整理しました。
- 健康診断後は全員に結果を通知する(労働安全衛生法第66条の6)
- 異常所見があった社員は3ヶ月以内に医師の意見を聴く(同法第66条の4・労働安全衛生規則第51条の2)
- 医師の意見に基づいて就業上の措置を決定・記録する(同法第66条の5)
- 個人票は5年間保存する(労働安全衛生規則第51条)
- 50人未満の会社は地域産業保健センターを無料で活用できる
「うちは小さいから…」とあきらめず、まずは相談から始めてみてください。
産業医やさんぽセンターに気軽に声をかけることが、会社を守る第一歩になります。
産業医のご契約・ご相談はお気軽に
「どんな産業医が必要か分からない」「まず話を聞いてみたい」という段階でも大丈夫です。
中小企業の状況に合わせた、現実的なサポートをご提案します。
参考文献・参考URL
- 厚生労働省:労働安全衛生法に基づく健康診断実施後の措置について
- 秋田労働局:健康診断を実施し、事後措置を徹底しましょう(PDF)
- リモート産業保健:健康診断の事後措置の流れと企業の義務を解説
- FirstCall:健康診断の事後措置の流れ5ステップ│企業の義務も徹底解説
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的判断・法的判断の代わりとなるものではありません。
産業保健上の具体的な対応については、産業医・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
掲載内容は執筆時点の法令・ガイドラインに基づいており、最新情報は厚生労働省等の公式サイトをご確認ください。
