治療しながら働ける会社へ!2026年4月から義務化
「がん治療中の社員が、会社に迷惑をかけたくないと退職してしまった」「持病のある従業員をどうサポートすればいいのかわからない」――そんな経験や悩みをお持ちの経営者・人事ご担当者の方も多いのではないでしょうか。
実は2026年4月1日より、治療を受けながら働く従業員を支援することが、すべての事業主の「努力義務」になりました。法律が変わった今、何をすべきかを一緒に確認しましょう。
📋 この記事の目次
今さら聞けない!「治療と仕事の両立支援」って何?
「治療と仕事の両立支援」とは、病気の治療を受けながらも、働き続けられる職場環境を会社が整えることを指します。
対象となる疾患は幅広く、がん・糖尿病・心疾患・脳卒中・難病・メンタルヘルス疾患など、長期にわたる治療が必要な病気が対象です。
日本では、がんの罹患者(病気にかかった人)のうち約3人に1人が就労世代(20〜64歳)とされています。つまり、「うちの社員には関係ない」とは言えない時代になっているのです。
なぜ今、注目されているの?
以前は「病気になったら仕事を辞めるしかない」という風潮が根強くありました。
しかし医療の進歩により、治療しながら働ける病気が増えています。
だからこそ、会社側の体制づくりが求められるようになったのです。
💡 ポイント
治療と仕事の両立支援は「優しい会社のオプション」ではなく、貴重な人材を離職させないための経営戦略でもあります。
採用コストや業務引き継ぎのコストを考えれば、支援体制の整備は会社にとってもプラスになります。
2026年4月から何が変わった?法改正のポイントをおさらい
なるほど、と思った方もいるかもしれませんが、「そもそも法律で決まっているの?」という疑問もあるでしょう。改めて確認しましょう。
根拠法:改正労働施策総合推進法
2026年4月1日、改正労働施策総合推進法が施行されました。
この改正により、すべての事業主に対して、治療と仕事の両立支援のための必要な措置を講じることが「努力義務」として課されることになりました。
あわせて、厚生労働大臣が「治療と就業の両立支援指針」(令和8年厚生労働省告示第28号)を定めており、企業はこの指針に基づいた取り組みが推奨されています。
「努力義務」って、やらなくてもいいの?
「義務」ではなく「努力義務」だから、無視しても大丈夫……そう思った方は要注意です。
努力義務とは、「できる限り取り組まなければならない」という法的な要請であり、行政指導の対象になる場合もあります。
💡 ポイント
努力義務は「やらなくていい義務」ではありません。
社会的な要請として取り組みが求められており、将来的に義務化が強化される可能性もあります。
まずは「何をすべきか」を把握することが大切です。
うちの会社は大丈夫?すぐ確認すべき5つの対応策
だからこそ、今すぐ確認してほしいことがあります。
厚生労働省の指針では、企業が取り組むべき措置として以下の4つが示されています。
① 基本方針の表明と全従業員への周知
会社として「治療と仕事の両立を支援する」という基本方針を明文化し、全従業員に周知することが求められます。就業規則の整備や社内ルールの作成が第一歩です。
② 管理職・従業員への研修・意識啓発
「病気の社員に何と声をかければいいかわからない」という管理職の声はよく聞かれます。
理解を深める研修や勉強会を通じて、職場全体での意識づくりが重要です。
③ 相談窓口の設置
従業員が安心して相談できるよう、社内の相談窓口を設置することが求められます。
産業医や人事担当者が窓口になるケースが多いです。相談内容のプライバシー保護についても明確にしておく必要があります。
④ 治療と就業の両立支援に関する制度、体制等の整備(休暇制度・勤務制度)
病気を抱えながら自分らしく働き続けるためには、個々の体調や通院スタイルに合わせた休暇・勤務制度の導入を推奨しています。
1時間単位の有休や、治療専用の傷病休暇のほか、通勤負担を減らす時差出勤や在宅勤務が有効です。また、長期休業後の不安を解消する試し出勤制度もスムーズな復職を支えます。
⑤ 事業場内外の連携
治療と仕事の両立には、社内・社外が一体となったサポート体制が欠かせません。
まず社内では、本人を中心に上司、人事、産業医などが連携します。
主治医から就業上の配慮に関する意見をもらい、現場で具体的な調整を行うことが重要です。
また、社内だけで抱え込まず、地域の産業保健総合支援センター、主治医と連携している医療ソーシャルワーカー、保健所等の保健師、社労士などの外部専門家を活用しましょう。
多様な専門知を合わせることで、より円滑な支援が可能になります。
💡 ポイント
5つすべてを一度に整備しようとすると大変です。まずは「相談窓口の設置」と「基本方針の周知」から着手するのが現実的。小さな一歩が、従業員の安心につながります。
対応しないとどうなる?中小企業が知っておくべきリスク
「うちは小さい会社だから関係ない」と思っていませんか?
実は中小企業こそ、対応が急がれる理由があります。
★優秀な人材の離職リスク
病気になった従業員が「会社に言えない」「迷惑をかけたくない」と感じて退職を選んでしまうケースは少なくありません。支援体制がないことで、経験豊富な人材を失うことになります。
★採用・ブランドへの影響
就職・転職市場では、従業員への配慮が企業評価に直結するようになっています。「働きやすい会社」としての信頼は、採用力にも影響します。
★トラブル・訴訟リスク
病気を理由とした不当な扱いや解雇は、労働トラブルや訴訟に発展するリスクがあります。体制を整えることは、こうしたリスクを未然に防ぐことにもなります。
⚠️ 注意
病気を理由とした解雇や不当な降格は、労働契約法や労働施策総合推進法に違反する可能性があります。「病気になったから辞めてもらう」という対応は絶対に避けましょう。疑問がある場合は専門家に相談を。
産業医・支援機関をうまく使う!相談先まとめ
「何から手をつければいいかわからない」という方も多いと思います。だからこそ、使える外部リソースを知っておくことが大切です。
産業医に相談する
従業員50人以上の事業場には産業医の選任義務があります(労働安全衛生法第13条)。産業医は、病気を抱える従業員の就業判定や職場復帰支援の専門家です。50人未満の会社でも、産業医と契約することで専門的なアドバイスが受けられます。
両立支援コーディネーターを活用する
独立行政法人 労働者健康安全機構が養成する両立支援コーディネーターは、医療機関と職場をつなぐ専門の相談員です。無料で利用できる場合も多く、中小企業にとって強い味方です。
都道府県の産業保健総合支援センター
全国47都道府県に設置されている産業保健総合支援センター(さんぽセンター)では、中小企業向けの無料相談や各種支援が受けられます。まずは地域のさんぽセンターに問い合わせてみましょう。
💡 ポイント
治療と仕事の両立支援は、会社だけで抱え込む必要はありません。産業医・さんぽセンター・両立支援コーディネーターなど、無料で使える専門家・公的機関をうまく活用しましょう。
まとめ
治療と仕事の両立支援の努力義務化について、ポイントを整理します。
- 2026年4月1日、改正労働施策総合推進法が施行され、すべての事業主の努力義務となった
- 取り組むべき4つの対応策は①基本方針の周知 ②研修・意識啓発 ③相談窓口の設置 ④健康情報の適切な管理
- 対応しないと、人材離職・採用力低下・労働トラブルのリスクがある
- 産業医・さんぽセンター・両立支援コーディネーターなど、無料で使える外部リソースを積極的に活用しよう
- まずは「相談窓口の設置」と「基本方針の明文化」から始めるのがおすすめ
「何から手をつければいいかわからない」という方は、ぜひ産業医や専門家へのご相談をご検討ください。小さな一歩が、従業員が安心して長く働ける職場づくりにつながります。
産業医のご契約・ご相談はお気軽に
「どんな産業医が必要か分からない」「まず話を聞いてみたい」という段階でも大丈夫です。
中小企業の状況に合わせた、現実的なサポートをご提案します。
参考文献・参考URL
- 治療と仕事の両立について|厚生労働省
- 治療と仕事の両立支援ナビ|厚生労働省
- 事業主の方へ – 治療と仕事の両立支援ナビ
- 『治療と仕事の両立』に対する取組みが、事業主の努力義務となります!|大阪労働局
- 2026年4月「治療と仕事の両立支援措置」努力義務化へ|プラットワークス
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的判断・法的判断の代わりとなるものではありません。
産業保健上の具体的な対応については、産業医・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
掲載内容は執筆時点の法令・ガイドラインに基づいており、最新情報は厚生労働省等の公式サイトをご確認ください。
